フルート・ピッコロ解説【吹奏楽のための「ワルツ」】2018年度課題曲Ⅲ

ゆっふぃー

某音大卒業のフルート吹きです。普段は小さな会場で演奏活動を行ったり、教えたり、コンテンツ制作のお手伝いをしたりしています。 漫画が好きでほぼ毎日読んでいます。 使用楽器はムラマツの14k Gold(9k mech.) SRです。

吹奏楽コンクール 2018年度課題曲Ⅲ【吹奏楽のための「ワルツ」】のフルート・ピッコロ解説です。

曲の印象と演奏のポイント

曲全体の印象

かつてこれほどまで演奏者に委ねた課題曲があったでしょうか。

どのような解釈をするか指揮者の手腕も問われますし、演奏者もテンポや縦の線を合わせるだけでなく、息の合ったアンサンブルをしなければなりません。

技術的に難しい部分はほとんどなく、その分表現面にじっくりと向かい合ってほしいと作者は言っています。そのため、きっかけとなる部分や和声の変化に言及し、それをどう調理するかは皆さんに委ねたいと思います。

ディズニーやバレエ音楽らしさを感じた方もいるようで、独特なお茶目さや優雅さはこれまでの課題曲にはあまり見られなかった作風です。総合してみると大人っぽい曲と言えるかもしれません。

ピッコロ・フルートの演奏ポイント

ワルツの3拍子ですから1拍目に重さがあり、よく「ブン・チャッ・チャッ」と表現されます。

フルート・ピッコロは基本的にこの上にメロディーを乗せる役割を担います。フルートはソロもありますが、技術的に難しいものではないためただ吹いているだけになってしまい勝ちです。表現にどうアプローチしていくのかが大事になっていきます。

また、"leggiero"で8分音符がたくさん出てきますので木管楽器特有の音色を活かして奏したいです。

練習番号1~2

練習番号1

ここからようやく物語が動き出すかのように、ワルツのテンポとなります。テンポに乗りながらしっとりと歌い上げるために、温かい音色と緩やかなビブラートを掛けると良いでしょう。

旋律は30小節目のB♭へ向かっていきます。30小節目はC7(セブンス)の和音ですが、ここでのセブンスは着地する場所を探すような和音ですので、その先に何かあることを暗示します。

34小節目で解決し練習番号2へと続いていきます。

練習番号2

アウフタクトから”leggiero”と書かれていますがこれは「優美に、軽快に」という意味です。

こそこそと木管楽器が続いていく様は内緒話をしているかのようです。アタックを強くしすぎず軽めのタンギングで吹いてください。

4小節単位で一つの区切りになっているので、それぞれどんな感情なのか、どんな言葉なのか等すり合わせてみると良いでしょう。

練習番号3~5

練習番号3

3からは壮大なワルツとなります。アウフタクトのCはテヌートが付いている通り、急がないようにしてください。ここからは豊かな音色でたっぷりと吹きましょう。

63小節2拍目の休符で全員いなくなるので聴いている人は一瞬ハッとします。

その後にアクセントをしっかり付けて入ることで拍子感が一瞬わからなくなりますが、66小節目でまた綺麗な3拍子へと戻ります。その効果を持たせるためにアクセントはどれもはっきりと付けてよいでしょう。

67~68小節のrit.(リタルダンド)は次のソロへ向けて自然にかけたいところです。ディミニエンドが付いているのであまり過度になると心地良くないかもしれません。

クラリネットのソロとも相談しながら自然な流れが作れると良いです。

練習番号4

伴奏はサックスそれぞれ一人ずつだけであとはフルートとクラリネットのソロのみです。

クラリネットと対話する形になっていますから、フルートは大きいスラーを一つの区切りとして、それぞれどんなセリフで、どんな色や感情なのかを考えてみると面白いかもしれません。

79小節目で同時に音を伸ばすところも、色々な考え方があります。想像力を活かしてください。

練習番号5

練習番号1で出てきた旋律が少し形を変えて現れました。1よりもフレーズを長く取りやすくなっています。また、93小節目からはディミニエンドとなっていますので、やはり1とは雰囲気を変えたいところです。

その際、96小節目で伸ばす音がGm7♭5(ハーフディミニッシュ)という和音で1よりも複雑でオシャレになっていることがカギとなってきます。後続する旋律が短調になって少しせつない雰囲気へと変わるためです。

練習番号7~9

練習番号7

一拍一拍をしっかりとりすぎると遅れるので、一小節を一つ取りで感じてください。

ワルツにおけるこの形の8分音符は、遅れると全体がのろのろとしてしまうので注意が必要です。

130小節目からは似た形が練習番号3で出てきましたが、今度はアクセントもありませんし入るタイミングも違います。

練習番号8へ向けてクレッシェンドしてることも留意してください。一つ一つの音を大事に吹いてもいいところです。

練習番号8

”Pesante”は「重々しく」という意味ですから、どっしりと吹きます。

しかし、147小節目のVivoへ向かって少しずつ速くしていくので、徐々にアタックを軽くし練習番号7と同様に一小節一つで取るようにしてください。

151~152小節は分散和音ですから、カラーの違いを意識してください。

151~152小節はAdim(ディミニッシュ)で厳格な響きを持った和音ですが、153小節はE♭7(セブンス)ですっきりして道が拓けたような進行になっています。

練習番号9

フィナーレで壮大にクラリネット・サックスと共に旋律を吹きます。ワルツのリズムに乗せて朗々と吹くと雰囲気が出ます。

リード楽器に音色をブレンドさせるように、豊かな響きの音色を心がけましょう。166小節の和音もセブンスを使っていますので、次を予感させるフェルマータとなっています。

173小節目のフレーズはフルート・ピッコロ・グロッケンだけになります。スラーの頭の音が短くならないように気を付けてください。

おわりに

譜面通りに吹くだけでは物足りなくなってしまう、演奏者のアンサンブル力とセンスが問われる曲と言えるでしょう。そういった意味で、この曲を通して成長する部分はたくさんあるのではないかな、と思いました。

自分の考えや意見を積極的に周りの人と共有し、皆さんの「ワルツ」を作り上げて欲しいと思います。

ゆっふぃー

某音大卒業のフルート吹きです。普段は小さな会場で演奏活動を行ったり、教えたり、コンテンツ制作のお手伝いをしたりしています。 漫画が好きでほぼ毎日読んでいます。 使用楽器はムラマツの14k Gold(9k mech.) SRです。

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コメント:2件

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No.1みかん
素敵なサイトを、ありがとうございます!私は、ピッコロパートの者なのですが、35小節の入るタイミングがわからず、毎日のように顧問、先輩に怒られています。個人的にアドバイスは大変難しいとは思いますが、今回のサイトを見て、とても勇気付けられたような気持ちになりました♪ 2018/08/09(木) 20:55:37
No.2ゆっふぃー
みかんさん
コメント、ありがとうございます。
返信が遅くなってしまったので、コンクールはもう終わってしまったでしょうか?でしたら、すみません!
35小節目の入りがうまくいかないのは、最初の音のアタックがうまくいかないのか、Fl.1st2ndとのアンサンブルがうまくいかないのかによって対策が異なります。恐らく後者だと思いますが、1拍目頭の八分休符の重さがどのくらいなのか把握してください。それには、指揮者の振り方を実際にマネしてそれに乗せて(口で)歌えるようにするといいでしょう。
2018/08/19(日) 16:33:14

おわりだよ~

~ ここに「#sample」が存在した場合の処理を記述 ~