フルート・ピッコロ解説【古き森の戦記】2018年度課題曲Ⅰ
ゆっふぃー
某音大卒業のフルート吹きです。普段は小さな会場で演奏活動を行ったり、教えたり、コンテンツ制作のお手伝いをしたりしています。 漫画が好きでほぼ毎日読んでいます。 使用楽器はムラマツの14k Gold(9k mech.) SRです。
吹奏楽コンクール 2018年度課題曲Ⅰ【古き森の戦記】のフルート・ピッコロ解説です。
曲の印象と演奏のポイント
曲全体の印象
古き森の戦記は映画音楽を髣髴とさせるキャラクターがあります。作曲者本人も、”古(いにしえ)の森で行われた架空の戦いをイメージ”したと言っている通り物語性が強いです。
この曲におけるファンタジックな色をどのような要素で作り出しているかというと、不安定な調性にあります。楽譜には何の調号も付いていませんが、曲を通してc-moll(ハ短調)っぽさを持ちながら違うよと言わんばかりにそれを乱すフレーズが次々と現れます。
そういった意味で楽曲分析は少し難しい部類でしょう。
しかし、場面転換に当たる部分ではわかりやすくキャラクターを変えた和音で構成しているので、ポイントを抑えればとても演奏のしがいがある曲です。
ピッコロ・フルートの演奏ポイント
この曲におけるフルート・ピッコロは物語を進めていく主人公というよりは、光や風、水などの神秘的な要素を担当しているように思います。
吹奏楽やオーケストラではフルートは度々そのようなモチーフを担当します。(吹奏楽編曲でもよく演奏されるラヴェルの「ダフニスとクロエ」が良い例ではないでしょうか。)
この場合、フレーズにおける前後関係やアンサンブルをよく注意することがポイントになってきます。前の場面に入り込むべきなのか、ガラッと変えて目立たせるべきなのか、など考慮すべき点はたくさんあります。
今回はそういった部分を踏まえ、解説していきたいと思います。
冒頭~練習番号D
冒頭
深い森を表現しているのでしょうか、低めの音域の荘厳な雰囲気で始まります。3小節目のフルート・ピッコロの旋律は物語の動き出しを示唆するかのように、(周りのパートに比べ)高い音域で入ります。
速いスピードではっきりと入ると突拍子もない感じになりますので、1拍目のブレスをゆったりと取りしっとり入るのが理想的です。3連符も急がず拍いっぱいに吹いてください。
練習番号B
Bから様々な要素が入り組んでいますが、フルート・ピッコロの3連符は山型アクセントの付いたトランペットやトロンボーンのモチーフと対比して、流れるように滑らかに奏したい部分です。
この部分は先にピッコロ・フルート2nd・E♭クラで後に引き継いでフルート1st・オーボエとなります。なかなかうまく繋がらない場合は、後半組(フルート1st・オーボエ)の装飾音符をなくして合わせてみてください。
拍通りに合わせることができるようになったら、2拍取りして合わせられるようにしましょう。大きい拍の空間を共有するようなイメージでやるとこういった場合は綺麗に聴こえます。
また、木管低音が8分音符で刻んでいますので、合奏の際にはそれもよく聴くようにしましょう。
練習番号D
オーボエのソロに応えるかのようにフルートの3連符が登場します。先にオーボエが3連符を吹いていますので良く聴いて引き継ぐようにしてください。
このフレーズはスラーが付いていませんので、テヌート気味にタンギングをしながらたっぷり吹くと良いでしょう。
練習番号E~G
練習番号E
ガラっと曲調が変わります。ここまで♭系の調(臨時記号を見ると♭がたくさんあると思います)で構成されていたのがここで♯系に変わります。これはこの曲に限らずとても分かりやすいキャラクターの変化なので覚えておきましょう。
民族舞踊を髣髴とさせるサックスのソロに始まり、フルート・ピッコロは45小節目から4分音符で入ります。
クラリネットの8分音符のリズム感に乗せてください。
また、音程をとるのが難しい箇所ですが、初めにピッコロとフルート2ndのみで音程を調整してください。ピッコロを基準にしてフルート2ndは少し高めにとります。(短3度は高めにとらないと綺麗にハモれません。但し、4拍目は短3度ではないので例外です。)フルート1stはその上に乗っかる形で音程をとってください。
練習番号F
Eでのサックスのソロの旋律を今度はフルートとクラリネットで演奏します。
民族舞踊のような雰囲気を出すには、スタッカートが大切です。譜面に丁寧にアーティキュレーションが書かれていますので、守って演奏してください。スラーの後ろの音も短くするのがポイントです。
また、E♭クラと音程を合わせるように心がけてください。
58小節目のD♭は跳躍していることもあり合わせにくい音です。
高くなることが予想されますので、息の吹込みを少し低い位置にとることで高くなりすぎないようにしましょう。
練習番号G
ここでまた♭系の調に戻ります。b♭-moll(変ロ短調)で始まりますが、こちらも例に漏れずすぐに不安定になります。
Gの直前まで全パートでリズミカルに奏していたのが、Gに入ってAの旋律を再現したかと思えば65小節目から急に音数もパートも少なくなります。戦いの後の退廃的な雰囲気が少しだけ見え隠れする部分です。
67小節目のフルートはこの雰囲気に入り込んでいきたいのでブレスをゆったり取ることが大切です。
フルート1stのEは嫌な音ですが、力みすぎず自然な流れで入れると理想的です。後頭部から高音を引き出すようなイメージを持ってください。吹込みを前に前にしすぎると大きな音が出てしまいます。
また、合いの手になっている木管低音のフレーズをよく聴いてアンサンブルしましょう。
練習番号H~J
練習番号H
再びEの旋律が現れますが、次々と今まで使われたモチーフが現れ共存します。
82小節目のフルートは冒頭のモチーフに他なりません。
今回はフォルテでしっかりと入って存在感を出してください。こういった場合は物語でいうところの伏線回収のような意味合いがありますので、フォルテと言ってもごりごりと吹くわけではなく、豊かに響かせるイメージを持ってください。
97小節目からも同様です。
練習番号J
フォルティッシモですが、Fと同様アーティキュレーションはよく守ってください。
108小節4拍目の入りはトランペットの旋律をよく聴いてから入りましょう。音程がうまくとれます。
練習番号K~L
練習番号K
110小節目は同じ音型をオーボエとクラリネットが後続していることを意識してください。受け渡すつもりで吹かないと乱れる原因になります。
113小節目からは同じ音型をトロンボーンやトランペットサックスとどんどん入ってくることで緊迫感が生まれています。徐々にクレッシェンドし終盤へ向かっていきましょう。
117小節目からはスタッカートではなく短い音符と休符で書かれてるのがポイントです。
音の存在感を十分に保ってください。アクセントテヌートをすごく短くしたような感じで吹くと良いでしょう。
練習番号L
調性がなかなかはっきりしなかったこの曲も最後の最後は潔いほどはっきりとc-moll(ハ短調)で終わります。 123小節目のFの入りは直前の金管の旋律をよく聴いてから入りましょう。
クレッシェンドするとどうしても高くなりますので、息の吹込みを徐々に低めにする意識を持ってください。
おわりに
音楽はどんな曲でもそうですがこの曲は特に、どういうイメージを持つかが大事になってきます。それは色であったり風景であったり感情であったり様々な想像ができますが、それを全員で共有することが大切です。
音程やリズムを合わせることも重要な練習ですが、そういった時間を取ることもいい演奏をするには不可欠です。
ゆっふぃー
某音大卒業のフルート吹きです。普段は小さな会場で演奏活動を行ったり、教えたり、コンテンツ制作のお手伝いをしたりしています。 漫画が好きでほぼ毎日読んでいます。 使用楽器はムラマツの14k Gold(9k mech.) SRです。
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