【チューバ解説】2019年度課題曲Ⅲ 行進曲「春」

さいくろん

チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。

この記事では、課題曲Ⅲ 行進曲「春」の、チューバパートについて解説します。

演奏上での注意点や、練習方法についてご紹介します。

リズムと強弱表現を重視しながら、「楽譜どおりに吹けるようになる」ことを、この記事の目標にします。 初心者の皆さんにも伝わるように、演奏上のポイントを、分かりやすく説明できるように努めます。

なお、記事では、原則的にB♭管チューバを前提に解説します。

全体を通した練習ポイント

マーチを演奏をするときには、二つのポイントを特に大切にしましょう。

  • 打楽器と協力して、一定のテンポを維持しましょう。
  • p(ピアノ)やf(フォルテ)など、音の強弱を表現して、バンド全体のサウンドを支えましょう。

西洋音楽では、原則的に4小節単位でフレーズが組み立てられています。 チューバは伴奏を演奏するときに、2小節+2小節毎のまとまりを感じながら、演奏する必要があります。

全体を通した調号の確認

この課題曲は、途中で転調(調号が変わる)するので、注意しましょう。 誤った運指のまま演奏している場面に出会うことが多いので、「調号」と「運指の誤り」に的を絞って解説します。

冒頭からTrioまでは、チューバの楽譜では、調号に♭(フラット)記号が二つ付いています。一方で、Trioから後は、調号に♭記号が三つ付いています。

皆さんは、調号に♭記号が2つ付いた音階で、基本の音階練習をし、指使い(運指)を覚えている人が多いと思います。

しかし、この課題曲では、Trioから後では、普段は♭記号が付いていない 「A」 の位置にも♭記号が付いているので( 「A」が「A♭」になるので)、半音下げて吹きましょう。

下にTrioから後の調号の運指を示します。赤い丸印で囲っている音を確認しましょう。

冒頭

冒頭の3、4小節目や、7、8小節目の全音符は、響豊かなフォルテで、しっかりバンドを支えましょう。 音の長さを、同じリズムの他の楽器と統一することも大切です。

冒頭の9、10小節目の4分音符は、音の長さが短くならないようにします。 打楽器を除く全ての楽器が同じリズムですので、この場面でも、音の長さや音の終わりの処理を揃えます。

練習番号 A の3小節前の1拍目は、音の間隔が短く詰まると、落ち着きの無い演奏に聴こえるので、慌てずに正確なテンポを意識しましょう。

練習番号 A から Trio まで

練習番号 A の付点8分音符と16分音符のリズムは、発音が甘くならないようにしましょう。

付点8分音符は、アクセントを付けて勢いよく、16分音符は、発音のタイミングが甘くならないようにするとよいでしょう。

【練習方法】

このリズムの練習については、課題曲 Ⅱ マーチ「エイプリルリーフ」の記事にも掲載されています。 関心がある方は、併せてご参照ください。

練習番号 A の5小節目からの3小節間の8分音符と、練習番号 A の8小節目の4分音符は、音価(※)の違いを、吹き分けましょう。 (※)楽譜に指定された音符の長さ

練習番号 B の5小節前の2拍目のB、同 4小節前の2拍目F♯は普段演奏する機会の少ない音です。 普段から、ロングトーン練習を十分行い、運指のチェックと併せて、音程もチェックしておきましょう。

チューニング管を調整し、音程の逸脱を防ぐことが大切です。 また、テヌート記号が付いているので十分に長さを保って吹きましょう。

練習番号 B 4小節前の1拍目の8分音符は、4分音符との音価の違いを吹き分けて吹きましょう。

テヌート記号に関して補足

テヌート記号は、その音の長さを充分に保って、という意味で説明されることが一般的です。 勿論その通りですが、他の音符に比べて、「更に豊かに、大切に演奏して欲しい音」に、テヌート記号が付けられることが多い。というのが私の印象です。

練習番号 B からは、ダイナミクスの違いを吹き分けて、しっかりとフォルテで演奏しましょう。 この場面でも、音符の長さを確認して、音価の違いを吹き分けましょう。

練習番号 C からは、たっぷりとブレス(息継ぎ)をとって、豊かな音で演奏しましょう。

チューバは、テンポが遅くなりやすいので、同じリズムを演奏する他のパートとセクション練習を行って、音のスピード感を統一しておきましょう。

練習番号 C の2小節目のAの音を吹くには、基礎練習が大切です。 低い音が苦手な人は、ロートーンのロングトーンを根気強く取り組みましょう。

練習方法

低い音域の練習

下に低音域の練習用楽譜を示します。

「充分に唇が振動していること」、と「息をたっぷりと楽器に吹き込むこと」を意識してください。ブレスを深くして、たくさんの息を取り込みましょう。

低音域の練習楽譜1

「口の中を縦に広げるイメージ」で吹くと、吹きやすいでしょう。 顎の位置や舌の位置を「あいうえお」の「お」を発音するイメージです。

テンポは4分音符=60を基準にしますが、難しいときは、さらにテンポを落としてもかまいません。

低音域の練習楽譜2では、音の輪郭が、明瞭になることを目指します。 発音を舌に頼りきりにせず、お腹から息を吐くイメージを大切にしてください。

低音域の練習楽譜2

練習番号 C の3小節目のスラーが付いた16分音符は、アーティキュレーションの違いを正しく吹き分けましょう。

練習番号 D から練習番号 D の5小節目までは、演奏楽器が次第に増えて編成が厚くなります。楽譜上の指定はありませんが、演奏上の工夫としてクレッシェンドするバンドもあるでしょう。

この場合は、クレッシェンドの早さや形をパート内で統一しておきましょう。なお、意図的にクレッシェンドするかどうかは、必ず指揮者の指示を仰いでください。

実は、作曲者の福島弘和先生は、「mpの後にmfが出てくる~(中略)その間は、mpを維持ではなくmfにつながっていく音量の設定など、工夫してください。」(2019年度 全日本吹奏楽コンクール課題曲スコアより引用)と解説されています。

したがって、mp が指定されている練習番号 D から、mf の練習番号 D の5小節目までは、次第にクレシェンドするなどの工夫が、作曲意図に沿うことかも知れません。

練習番号 G の9小節目から、練習番号 H にかけても、「mpの後にmfが出てくる」場面があるので、音量変化の工夫が求められる可能性があります。(ただし、自分だけで判断せずに、指揮者の判断を仰いでください。)

なお、「クレッシェンドの早さと形について」は、このサイトの中の 課題曲Ⅱ マーチ「エイプリル・リーフ」の解説記事にも掲載していますので、そちらも、併せてご参照ください。

練習番号 F の4小節目のテヌートが付いた2拍目は、音の長さを保ちつつ、豊かな音で演奏しましょう。 ほとんどの楽器が、同じリズムで揃うので、音の出だしと長さを、揃えましょう。

Trio から 練習番号 I まで

Trioからのダイナミクスの違いは、しっかり表現しながらも、痩せた音にならないように、気をつけましょう。

4分音符も多用されるので、音価の違いを正しく吹き分けてください。 シンプルな4分音符ですが、逆に奥が深いものです。場面に合った音色や吹き方を模索してみましょう。

練習番号 G からの3小節間と、練習番号 H までの3小節間は、音の高さが同じなので一見同じに見えます。しかし、練習番号 H からは、8分音符ですから、その違いを吹き分けましょう。

練習番号 I から 最後まで

練習番号 I の1小節前からのフォルテは、さらに響き豊かな音で吹きましょう。

臨時記号が何度も現れるので、普段使わない音も、楽器がしっかり鳴るように、日ごろからロングトーンを行って、音程の確認をすることが大切です。

練習番号 I の4小節目のC♭は、音程が高めになる傾向があるので、2番と4番ピストンを使ってください。 4番ピストンが無いときは、3番のチューニング管の長さに気を配って、バランスをとる必要があります。

練習番号 I の5小節目に向かって、次第に音域が低くなります。それに伴って、音が痩せてしまわないように、深いブレスをとって、息をしっかり楽器に入れて吹きましょう。

練習番号 J の4小節前からは二拍目(弱拍)からの発音になるので、音の輪郭をはっきり強調して吹き、音の出だしが、テンポに乗り遅れないように気をつけましょう。

チューバを演奏する上での、二つの「遅れ」について

チューバを演奏するうえで、「遅れる」という意味には二つあることに、注意しましょう。 あるべきテンポより、実際に遅いテンポで演奏しているケースと、音が遅れて聴こえるケースの二つです。 詳しくは、suipedia 中の記事に掲載されています。関心のある方は、この記事も併せて読んでください。

練習番号 k の8小節目からの全音符はテンポが緩まないように、音の輪郭をはっきり、適切なタイミングで演奏することが大切です。

練習番号 L からのフォルテシモは、楽器に息をしっかり入れて、しかし、乱暴にならないようにしましょう。

練習番号 M の3小節前と2小節前の8分音符は、はっきりとアクセントをつけて吹きますが、音の長さが短くなりすぎて、駆け出さないように注意してください。

練習番号 M の2小節目の8分音符は、歯切れよく吹きましょう。 ただし、響の少ない音にならないように、気をつけましょう。

1拍目の跳躍が苦手な方は、Suipedia のなかに、跳躍練習も紹介されているので、そちらもご参照ください。

最終小節の8分音符の長さは、他の楽器と揃えましょう。 響きのある音で、課題曲全体を締めくくりましょう。

おわりに

行進曲「春」の解説は、いかがでしたか?

この課題曲で、コンクール初出場の方もいるかも知れません。 演奏が難しいと感じている人も、焦らずに練習を続けてください。

皆さんが、チューバをますます好きになることを願っています。

さいくろん

チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。

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