チューバ解説【吹奏楽のための「ワルツ」】2018年度課題曲Ⅲ

さいくろん

チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。

皆さん、こんにちは!

皆さんは、課題曲の練習に、毎日必死に取り組んでいることと思います。 なかには、楽器を吹き始めたばかりで、「音符を追いかけるのが、やっと」という人もいるでしょう。

この記事では、課題曲Ⅲ 吹奏楽のための「ワルツ」のチューバパートについて解説します 。 この曲のチューバパートは、楽譜の上ではシンプルですが、奥が深く、難しい曲だと思います。

「楽譜に書いてあるとおりに、吹ける」ことを、目標に、演奏上のポイントや、練習方法をご紹介します。 経験の長い人には、物足りない部分があるかもしれませんが、初心者にも分かるように、出来るだけ噛み砕いて説明します。

なお、記事では、原則的にB♭管チューバを前提に解説します。

練習のポイント、調号の確認

全体を通した練習ポイント

ワルツを演奏をするときには、二つのポイントを特に大切にしましょう。

  • 1. 1拍目の強拍を意識して、ワルツがワルツらしく聞こえるように吹きましょう。
  • 2. p(ピアノ 弱く)やf(フォルテ 強く)など、音の強弱を表現して、バンド全体のサウンドを支えましょう。

全体を通した調号の確認

この課題曲は途中で転調(調号が変わる)するので、初心者のみなさんはとくに注意しましょう。

誤った運指のまま演奏している場面に、出会うことが多いので、この記事では「調号」と「運指の誤り」に的を絞って解説します。

97小節目から154小節目までは、チューバの楽譜(以下、楽譜と表記します)では、調号に♭(フラット)記号 が4つ付いています。

皆さんは、調号に♭記号が2つ付いた音階で、基本の音階練習をし、指使い(運指)を覚えている人が多いと思います。

しかし、この課題曲では、転調している間に、普段は♭記号が付いていない 「A」 と 「D」 の位置にも♭(フラット)記号が付いているので、「A」と「D」の音は、半音下げて吹きましょう。 下に、転調している間の運指を示します。赤い丸印で囲っている音を確認しましょう。

冒頭~練習番号2

冒頭

冒頭にはTempo ad libitum テンポ・アド・リビトゥム(自由な早さで) と 記されています。 その後、rit. リタルダンド (だんだん緩やかに ) と、accel. アッチェレランド (次第に速める) が、交互に現れます。

チューバは練習番号1番までお休みですが、曲の世界観や、テンポの緩急を感じて、出番まで油断することなく待機しましょう。

練習番号1番

練習番号1番からは、Tempo di valse テンポ ディ ヴァルセ (ワルツの速さで)に変わります。 楽譜上は、シンプルな4分音符ですが、シンプルであればこそ、逆に奥が深いものです。

音の長さが短くなりすぎないように、気をつけましょう。 音のイメージを膨らませ、必要に応じて指揮者とも話し合って、曲に合った音を模索することも、課題曲に取り組む楽しさかも知れません。

例えば、音の終わりの処理は、響きを長めにしたほうが良いでしょうか。 それとも短めに演奏するほうが良いでしょうか。 発音は、鋭い方が良いでしょうか。 それとも、メローな感じが曲に合っているでしょうか。 いろいろな演奏を聴いて、研究してみましょう。

ちなみに、この場面のコントラバスは、ピッチカート の指定が付いています。 ピッチカート とは、弦楽器の奏法で、指で弦をはじいて演奏することで、チューバの1オクターブ 上の音を演奏しています。参考にしてみましょう。

27小節目のクレッシェンド(だんだん強く)の幅と早さは、指揮者に指示を仰ぎましょう。 曲の解釈によっては、クレッシェンドは早めにかけたり、逆に、遅めにかける必要があるでしょう。

31小節目から32小節目にかけては、meno mosso  メーノ モッソ (これまでよりも遅く)、accel. アッチェレランド (次第に速める )、a tempo  ア・テンポ (元の速さで)、と、大きなテンポの変化があります。テンポの変化にしっかり対応しましょう。

32小節目は、音の出るタイミングが、他の楽器(※)と揃うように気をつけましょう。
(※)コントラバス、バリトンサックス、バスクラリネット、バスーン

練習番号2番

46小節目の1拍目は、この楽曲での最初の8分音符ですから、音の長さの違いを吹き分けましょう。

ただし、短くなりすぎないように、音の響きを大切に吹きましょう。また、アクセント記号が付いているので、音の発音は明瞭に演奏しましょう。

練習番号3~5

練習番号3番

47小節目の音にはテヌート記号が付いているので、音の長さをしっかりと保って、次の小節につながる、響き豊かなフォルテで吹きましょう。

■■■テヌート記号に関して補足■■■
テヌート記号は、その音の長さを充分に保って、という意味で説明されることが一般的です。 勿論その通りですが、他の音符に比べて、「更に豊かに、大切に演奏して欲しい音」に、テヌート記号が付けられることが多い。というのが私の印象です。

練習番号3からの長い音(付点2分音符)は、この場面にマッチした音のイメージを膨らませておきましょう。 普段から色々な音楽を聴いて、イメージを膨らませてください。また、実際の演奏にあたっては、指揮者ともよく話し合ってみましょう。

ちなみに、この場面のコントラバスは、アルコ(弦を弓で弾く奏法)の指定で、チューバの1オクターブ 上の音を演奏しています。参考にしてみましょう。

【練習方法】
★★★低い音域の練習★★★
練習番号3番からは、低くて吹きにくい音が続きます。 下に低音域の練習用楽譜を示しますので、根気強く練習してください。

低い音域を演奏するポイントは、「口の中を縦に広げるイメージ」で吹くと、吹きやすいでしょう。 顎の位置や舌の位置を「あいうえお」の「お」を発音するイメージです。

テンポは4分音符=60で練習します。 難しいときは、さらにテンポを落としてもかまいません。

低音域の練習楽譜1で、「充分に唇が振動していること」、と「息をたっぷりと楽器に吹き込むこと」を意識してください。ブレス(息継ぎ)は深くして、たくさんの息を取り込みましょう。

■■■ブレスと演奏の関係■■■
ブレスを「息継ぎ」と書きましたが、「演奏のためのたくさんの息を吸うこと」だと思ってください。 深くて大きな息を取り込むことは、管楽器奏者にとって、最も大切なことのひとつです。

ただし、ブレスのために直前の音が短くならないようにしましょう。普段の基礎練習で、呼吸のコントロールができるように努めましょう。

低音域の練習楽譜1

低音域の練習楽譜2
低音域の練習楽譜2では、音の輪郭が、明瞭になることを目指します。 発音を舌に頼りきりにせず、お腹から息を吐くイメージを大切にしてください。

62小節目の8分音符は、次の小節に向けて、しっかりクレッシェンドを表現しましょう。

63小節目の3拍目からの、アクセントの付いたフォルテシモは、音の出だしが明瞭に聞こえるように吹きましょう。 充分に息を吸ってから、音程がゆらゆらと揺れたり、音色が痩せたりしないようにしましょう。

3拍目に現れるこの音は、とても大切です。楽譜上はシンプルな音ですが、しっかりバンドを支えられるように、日々の基礎練習を取り組んでください。

66小節目の8分音符は、アクセントを付けて勢い良く吹きましょう。ただし、音符と音符の間が詰まらないように、慌てないで吹きましょう。

練習番号5番

練習番号5番の1小節前から、コントラバスは、ピッチカート の指定が付いています。参考にしましょう。

88小節目、90小節目の臨時記号が付いた音(F♯、H)は、演奏機会が少ないので、音程の確認をしておきましょう。

特に90小節目のHは、1、2、3番ピストン全てを使うので、音程が高くなる傾向があります。4番ピストンが付いている楽器では、2番と4番ピストンを使いましょう。

Lento~練習番号7

Lento

Lento (レント 緩やかに)から転調して、調号には、♭(フラット)記号が4つに増えます。 AとDの指使いが普段とは異なるので、気をつけましょう。

練習番号7番

largamente ラルガメンテ の提示がありますから、たっぷりと、豊かな響きのある音を意識しましょう。

コントラバスは、アルコ(弦を弓で弾く奏法)で、チューバの1オクターブ上の音を演奏しています。参考にしましょう。

113小節目の3拍目には、テヌート記号が付いていますから、音の長さを十分に保って吹きましょう。ただし、114小節目が、出遅れないように気をつけましょう。

ここでも、普段演奏する機会の少ない音が出てきますから、音程に気をつけましょう。

129小節目のfp (フォルテピアノ)は、フォルテでアクセントを付けて吹いた後に、連続して直ちにピアノに落とします。

ピアノに落とした時は、音程が下がり気味に、また、クレッシェンドするにつれて、音程が上がり気味になる傾向がありますから、音の強弱に関わらず、音程がゆらゆらと揺れないように、自分の音をしっかり聴きながら練習をしてください。

【練習方法】
下にクレッシェンド練習用の楽譜を提示します。 テンポは4分音符=50で練習します。息が4拍保てないときは、テンポを上げても構いません。

4拍吹き終えたときに、肺に未だ吐く息が残っているようであれば、クレッシェンドの幅を大きくしましょう。

クレシェンドの練習

クレシェンドとデクレッシェンドの練習

練習番号8~最後

練習番号8番

Pesante ペザンテ(重々しく)になり、フォルテシモになりますから、これまでよりも、さらにより豊かな響きが必要です。ただし音が荒くなったり、音を割らないようにしましょう。 あくまでも楽曲の世界観を大切にしてください。

Vivo

Vivo ビーボ (活発に、速く) からは、テンポが上がります。 148小節目からは、1オクターブの音の跳躍が繰り返し現れます。しかも、上のE ♭の音域が、高くて吹きずらいかもしれません。低い音と、高い音の息の使い方の息の吹き分けをしっかり練習しましょう。

【練習方法】
高音域の練習1
高音域は、口の中の形を縦に狭く、日本語のあいうえお、の「い」の発音のイメージで息を入れましょう。

なお、ハイトーン(高音域)の練習は、一日の練習のうち、最後の5分から10分程度の短時間で行ないましょう。

長時間、無理に練習しないように、注意しましょう。 楽に演奏できるテンポで、クレシェンドを意識して練習しましょう。

音の跳躍練習

最初は、ゆったりとしたテンポで、正確に吹けることを確認しましょう。 メトロノームを使って、4分音符を=60に設定しましょう。

低い音と、高い音の息づかいが、コントロールできるようであれば、徐々にテンポをあげていきます。4分音符=80や100まで速めてみましょう。

この練習は、アクロバットのように、早いテンポで演奏できるようになることが、目的ではありません。 自分の音をよく聴きながら、じっくりと取り組んでください。

また、音の跳躍練習は、このサイトの、チューバの練習方法についての紹介ページでも、ご紹介しています。そちらも参照してください。

154小節目のallargando(アラルガンド)は、クレッシェンドしながら速度をおとします。 他の楽器と、スピード感やテンポを揃えましょう。ただ単に遅くなるだけではありませんので、気をつけましょう。

練習番号9番

練習番号8番と比べると、ダイナミクスが一旦フォルテに落ちています。 ですのでTempo Ⅰ(テンポプリモ 最初のはやさで)からは、落ち着きを取り戻して、静寂に向かっていく予感を表現しましょう。

楽曲全体の解釈などを含めて、ここでの強弱は指揮者の指示を仰ぎましょう。

最終小節

最後の音は、見慣れない記号があります。 これは、laissez vibrer で、音を伸ばしたままに、という意味です。

長めの音で、余韻を残すような吹き方が良いかも知れません。

楽曲の世界観を完結させる大切な音です。 小さくても、音の輪郭がつぶれたり、かすれたりしないように練習をしましょう。 なお、この場面のコントラバスは、ピッチカート の指定が付いています。

おわりに

この楽曲には、チューバの難しいフレーズは、あまり出てこないかも知れません。 しかし、ワルツがワルツらしく聴こえ、楽曲の世界観を表現するために、チューバはとても重要です。

この記事が、楽譜をしっかりと見直して、楽曲の世界観を感じながら、楽しく吹ける契機になることを願っています。

さいくろん

チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。

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