チューバのお手入れ方法(定期的に行う編)


さいくろん
チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。
チューバ奏者の皆さん、楽器の調子はいかがですか?
日常のお手入れは行なっているのに、「なぜか楽器の調子が最近悪いぞ」と感じることはありませんか?
「演奏後のお手入れ」だけでは行き届かない部分のお手入れをすれば、劇的に楽器の音が良くなることもありますよ。
ここでは、定期的に行なうお手入れ方法をご紹介します。 演奏する頻度にもよりますが、二週間から一か月程度毎に行いましょう。 なお、ここでは、ピストンタイプのE♭管バス(チューバ)を例にして紹介します。
抜き差し管のクリーニング
抜き差し管の内部の汚れは定期的にクリーニングしましょう。 クリーニング後は、気持ちよく演奏できるものですし、音色や音程の改善を体感できる場合もあります。
内側のクリーニング
YAMAHA / 金管用クリーニングロッド M*チューバ用抜き差し管の内部のクリーニングには、クリーニングロッド(掃除用の棒)とポリシングガーゼ(掃除用の清潔なガーゼ)を使います。
YAMAHA ポリシングガーゼ PGL2ポリシングガーゼをクリーニングロッドに巻きつけて、準備をします。
このとき、クリーニングロッドが露出しないように気をつけましょう。
クリーニングロッドが管内に直接触れて傷つかないようにするためです。
次に抜き差し管を抜きます。
抜き差し管を抜くときは、「演奏後のお手入れ」の項でも触れたように、対応する番号のピストンを押しながら抜きましょう。
ポリシングガーゼを巻きつけた方向にゆっくり回しながら出し入れをします。
外側のクリーニング
まず、抜き差し管に付いている古くなったスライドグリスを拭き取ります。
YAMAHA スライドグリス SG4スライドグリスとは、抜き差し管に塗るグリスのことです。
スライドグリスは、時間の経過とともに劣化したり固くなって、抜き差し管の動きが渋くなることがあります。
お手入れのときに、まめに塗り直しましょう。
次にきれいになった抜き差し管の表面に、スライドグリスを塗り直します。数回スライドさせてグリスがなじむようにしましょう。
スライドグリスには抜き差し管を腐食から保護し、スムーズに動かすために適度な粘り気があります。
はみ出した余分なグリスはきれいに拭き取りましょう。
マウスピースのクリーニング
ヤマハ マウスピースブラシ L MPBL2マウスピース内部の汚れは、演奏に悪影響を及ぼす恐れがあります。マウスピースは定期的にクリーニングを行いましょう。
チューバのマウスピースには、チューバ用のマウスピースブラシが販売されています。
マウスピースブラシをスロートに通して、きれいな水を使ってクリーニングします。
ブラシを差し込む方向は、口を当てる部分の反対側から差し込みましょう。
YAMAHA BS2 ブラスソープマウスピースは水で洗っても良いのですが、ブラスソープとぬるま湯で作ったブラスソープ液を利用すると、より効果的ですのでお勧めです。
マウスピースブラシを使ってクリーニングしたあと、きれいな水ですすいでから、余分な水分をよく拭き取ってください。
ウォーターキイホールのクリーニング
ヤマハ トーンホールクリーナー TCL2ウォーターキイホールには、気付かない間に汚れが付着します。定期的にクリーニングしましょう。
このとき、トーンホールクリーナーを使うと効果的です。
ウォーターキイホールとは、太い抜き差し管の底についている、水抜き用の穴です。
トーンホールクリーナーは必要に応じて折り曲げて使うこともできるので、細かい部分の掃除にも利用できます。
ただし、これは鉄線に繊維を巻きつけたものです。
中の鉄が露出した使い古しのトーンホールクリーナーは、楽器を痛めるので、使わないようにしましょう。
バルブケーシングのクリーニング
バルブケーシング(ピストン部分)に、汚れが付着したり、古いオイル成分が変質したりすると、ピストンの動きが渋くなり、演奏ミスに直結します。
定期的にクリーニングを行い、万全の準備を整えてから本番に臨みましょう。
ピストン表面の拭きとり
バルブケーシングから、ピストンを抜き取ります。 ピストンを抜き取る方法は、演奏後のお手入れの項をご参照ください。
YAMAHA ポリシングガーゼ PGL2ピストンの汚れを、清潔なポリシングガーゼで拭き取ります。
ピストンは非常にデリケートですから、ゴシゴシとこするように強く擦らないようにしましょう。
また、ピストンは、床や机に直接置かずに、必ず清潔なポリシングガーゼを敷いた上に置きましょう。
バルブケーシング内部の清掃
YAMAHA クリーニングロッド ピストン CRVバルブケーシングの内側は、ポリシングガーゼを巻きつけたクリーニングロッドで清掃します。
ケーシングには、専用のクリーニングロッドがあります。
巻きつけるとき、クリーニングロッドが露出しないように、気をつけましょう。
クリーニングロッドをポリシングガーゼに巻きつけた方向にゆっくり回しながら、ケーシングの中を出し入れします。
バルブケーシングの内側とピストンのクリーニングが終わったら、バルブオイルを数滴注油してなじませます。
バルブオイルの注油方法は、「演奏後のお手入れ」の項をご参照ください。
管体内のクリーニング
YAMAHA BS2 ブラスソープ管内の洗浄には、ぬるま湯を用います。
このとき、ブラスソープとフレキシブルクリーナーを使うと効果的です。
フレキシブルクリーナーには、自由に曲げることができるワイヤの先端にブラシが付いていて、管内のクリーニングに便利です。
YAMAHA / ヤマハ FCLL4 フレキシブルクリーナー Lチューバ・ユーフォニウム用のものが販売されています。
フレキシブルクリーナーは、U字管には使用しないでください。
第1、第2、第3抜き差し管に使用する場合は、直管部だけに使いましょう。
無理に通すと、楽器の中に詰まることがあるので気をつけましょう。
第1、第2、第3抜き差し管では、直管部だけ(赤い線のところまで)に使いましょう
クリーニングが終わったら、清潔なガーゼで水分を完全に取り、グリスを塗ってください。
グリスの塗り方は、上の抜き差し管のクリーニングの項をご参照ください。
ウォーターキイのコルク交換
ウォーターキイのコルクは、気付かない間に劣化して、十分に役割を果たせなくなります。
消耗品だと割り切って、定期的に交換を行いましょう。
コルク交換作業に自信がない方でも、コルクからの水(空気)漏れがないか、定期的に確認しましょう。
コルクの劣化があるときは、できるだけ早く、楽器店に交換を依頼しましょう。
コルクは楽器店で購入できます。 古いコルクを外して、新しいコルクを瞬間接着剤で接着します。
おわりに
スクールバンドにお邪魔すると、響きが少なくて音程の悪いチューバを目にすることがあります。 そんな楽器でも、お手入れをすると、「良く響く楽器」に蘇ったことが何度もあります。
「練習は熱心にしているのに、良い音が出せない」とか、「何故だか楽器の音程が悪い」と感じているチューバ奏者の皆さんは、楽器のお手入れをしてみましょう。
あなたの楽器も本来の力を取り戻して、演奏活動がさらに楽しくなりますよ。
皆さんが、これからも楽しく演奏できることを願っています。

さいくろん
チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。
コメント (6件)感想、指摘系はここに。相談は掲示板に。
こっちはB♭管なんですけど同じようにやればいいですか?ついでにピストンじゃないです。150万のチューバです 2018/06/23(土) 09:52:59
調性の異なるB♭管のチューバに対しても、基本的にお手入れの方法は同じです。
しかし、ミクさんの楽器は、ロータリーのようですので、バルブ周辺への注油が
解説記事とは異なると思います。
【ロータリー周辺への注油】
ローターオイル
スピンドルオイル
レバーオイル
など、ピストンタイプでは使わない種類のオイルが必要です。
各オイルは、用途に応じて粘度などが異なるので、用途に応じたオイルを使いま
しょう。
【楽器表面を拭くクロスについて】
解説記事では、シルバーの楽器で解説しているので、シルバー用のクロスを紹介
しています。
楽器の表面の仕上げによって、最適なクロスの種類が異なるので、自分の楽器に
あったものを利用してください。
【補足】
金管楽器のお手入れ方法として、「楽器に水を通して管内を洗浄する」方法もあ
りますが、メーカーによっては、洗浄目的であってもロータリーチューバへ水を
入れることを推奨しないところもありますから、注意しましょう。
150万円のB♭チューバでしたら、おそらく海外製のチューバでしょうか?
ミクさんのバンドが、スクールバンドなのか、社会人バンドなのかは分かりませ
んが、これからも豊かなチューバライフを歩まれることをお祈りします。
さいくろん
最近響きが消えてしまって良い音がなりません。チューバは持って帰ることができない環境下なので明日学校に行ったら洗ってみようと思います!でも2年なこで3年に「やめとけ」や「壊れる」などと言われてしまって洗うことができないかもしれません…どうしたら洗えますか?(すいません…)
あとピストンのガイドにものすごく汚れが付いていて、一つ一つ外して洗いたいのですが、壊れたりしませんか?
あともうひとつ質問です!
マウスピースブラシでマッピの管?の部分を洗っても汚れが取れませんでしたどうしたらいいですか?ブラシはLで、マッピの種類は「YAMAHA JAPAN 67C4」です!
こんにちは!
記事を参考にしていただけたならば、嬉しいです。
ありがとうございます。
●「チューバを洗う」のは、ベルやマウスパイプから「じゃぶじゃぶ水を通して
洗う」イメージを抱く先輩方も多いかもしれません。
ロータリーチューバの場合は、水を通すことをヤマハも推奨していないので、先
輩方のおっしゃることも一理あると思います。
とりあえず、チューニング管だけ、フレキシブルクリーナーを使って、クリーニ
ングしてみましょう。
ただし、フレキシブルクリーナーは、1~3番のチューニング管では、直線部分に
のみ使いましょう。
●ヤマハのピストンチューバのガイドは、半ば消耗品ですので交換可能です。
私の場合は、ハードなスケール練習を行なうので、大きな本番の前には交換して
います。
しかし、
アナザーエデンさんの楽器の状態にも拠りますが、固着している場合は、ピスト
ンを破損する恐れもあるので、ガイドの交換は、プロのリペアに依頼しましょう。
ガイドの交換は、ピストンの螺子が根元から折れる危険が潜んでいます。この場
合は、本格的に修理が必要です。
予選まで残り時間が少ないので、今回は自分で外すのは止したほうが良いかもし
れません。
●マウスピースブラシでスロートを洗っても汚れが取れないのは、気になりますね。
67C4は、私も使っていますよ~
おそらく、代々引き継がれて利用されたマウスピースなのかもしれません。
マウスピースブラシで落ちないからといって、ごしごしと削り取ると、マウス
ピースを破損する恐れがあるので、無里はしないほうが無難だと思います。
アナザーエデンさんが中学生なのか、高校生なのか分かりませんが、「どうして
も、どうしても汚れが気になる」ようなら、思い切ってマイマウスピースを購入
するという方法も検討してはいかがでしょうか。
チューバは、おいそれと購入できるものではありませんが、マウスピースは、頑
張れば購入できない価格ではありません。
自分専用のマウスピースには愛着が沸き、練習意欲が高まることでしょう。
では、アナザーエデンさんのご活躍をお祈りいたします。
こんにちは。丁寧な記事ありがとうございます。
実践してみたいと思うのですが、抜き差し管の内側のクリーニングと、管体内のクリーニングとは、どう違うのでしょうか…?
初心者なもので、とんちんかんな質問をしているかもしれませんが、お返事いただけると嬉しいです。 2019/01/27(日) 21:25:31
ご質問いただき、ありがとうございます。
「抜き差し管の内側のクリーニング」と、「管体内のクリーニング」とは、どう 違うのでしょうか…?
というご質問をいただきました。
お返事が遅くなり、申し訳ありません。
「抜き差し管の内側のクリーニング」と、「管体内のクリーニング」は、原則的には同じことです。
ただ、記事の中では、用いる道具や、お手入れの頻度の違いから、二つを分けて記しました。
記事で示している「管体内のクリーニング」とは、長くて大きくカーブしたベル側の管のクリーニングを「フレキシブルクリーナーを用いて行う」ことを想定しています。
逆に、抜き差し管(U字管)では、U字部分で詰まる恐れがあるので、フレキシブルクリーナーは使わないようにしましょう。
頻度の面では、抜き差し管が吹込管に近いこともあり、ベル側に比べて汚れが付きやすいので、「抜き差し管の内側のクリーニング」は、よりこまめにお手入れされることをお薦めします。
なお、
ロータリーチューバの場合、クリーニングのときに気をつけて欲しいことがあります。
●吹込管には、フレキシブルクリーナーを用いないこと。
●吹込管から水を入れないこと。
です。
これはチューバの吹込管が、ロータリーに直接接続していることが理由で、ヤマハからも注意喚起が行われているので、ご注意ください。
それでは、けいさんが、楽しく充実した練習ができることを願っています。