チューバ解説【古き森の戦記】2018年度課題曲Ⅰ
さいくろん
チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。
チューバ奏者の皆さん、こんにちは! 毎日の練習は楽しいですか?
この記事では、課題曲Ⅰ「古き森の戦記」の、チューバパートについて解説します。
皆さんの中には、チューバを始めて、まだ日が浅い人もいるかも知れません。 この記事では、「楽譜どおりに吹けるようになる」ことを目標にします。
また、課題曲の演奏だけではなく、基礎的な練習の方法と組み合わせて説明します。
経験の長い人には、物足りない部分があるでしょうが、初心者にも分かるように、できるだけ噛み砕いて説明します。
なお、記事では、原則的にB♭管チューバを前提に解説します。
練習のポイント、調号の確認
全体を通した練習ポイント
この楽曲を演奏をするときには、二つのポイントを大切にしましょう。
- 1. p(ピアノ 弱く)からfff(フォルテシシモ できるだけ強く)まで、ダイナミクス(音の強弱)の違いを吹き分けられるようにしましょう。
- 2. ロングトーンやクレッシェンド(だんだん強く)、デクレッシェンド(だんだん弱く)でも、音が揺れないように、基礎練習にも励みましょう。
各パートが正確な音程で、響きの良い音色で演奏することで、美しいハーモニーが生まれます。その為にも、チューバを含む低音楽器が、厚みのある豊かな音で、バンド全体を支えましょう。
合奏では、全体の音を聴く訓練をしましょう。
全体を通した調号の確認
誤った運指のまま演奏している場面に出会うことが多いため、この記事では「調号」と「運指の誤り」に的を絞って解説します。
この課題曲では、冒頭から最後までチューバの楽譜(以下、楽譜と表記します)では、調号に♭(フラット)が付いていません。
皆さんは、調号に♭記号が2つ付いた音階で、基本の音階練習をし、指使い(運指)を覚えている人が多いと思います。しかし、この課題曲では、調号の「B」と「E」の位置に♭(フラット)記号が無いので、「B」と「E」は半音上げて吹きましょう。
- 「B」は、1、2、3番ピストン、または、2、4番ピストンで吹きましょう。
- 「E」は、2番ピストンです。
下にこの課題曲での運指表を示します。赤い丸印で囲っている音を確認しましょう。
冒頭~練習番号C
冒頭
冒頭に、adagio アダージョ (遅いテンポ) misterioso ミステリオーソ (神秘的に) とあります。 神秘的な音楽の世界観をイメージして演奏しましょう。
練習番号Lまで、4分の4拍子の楽曲です。4分の4拍子では、1拍目が強拍で、2拍目と4拍目が弱拍、3拍目が中強拍になるのが原則です。
アクセントが付く強拍と、アクセントが付かない弱拍が、繰り返されることによってリズムが生まれ、音楽が前進します。
チューバは、強拍と中強拍を意識して、4分の4拍子をしっかり提示しましょう。
冒頭のロングトーンでは、ffからpに向かうデクレッシェンドをしっかり表現しましょう。 この時に、音程がゆらゆらと揺れたり、音色が痩せないように気をつけましょう。
また、このロングトーンは、2小節目の4拍目までで音符が終るグループ(※1)と、3小節目の1拍目まで音符が続くグループ(※2)と、二つのグループがあります。
チューバは、楽譜に指定された長さを超えて、漫然と吹かないようにしましょう。
- ※1(バスーン、バリトンサックス、トロンボーンの3番、チューバ、コントラバス)
- ※2(トロンボーン1番と2番、テナーサックス)
この場面のデクレッシェンドは、早めに(すぐに小さくする)のか、直線的にするのか、曲の世界観を考えて吹きましょう。
冒頭の「C」の音は、楽器の構造上、音程が高くなりがちです。 この音は、4番ピストンを使いましょう。
4番ピストンが付いてない場合は、3番のチューニング管を適切に抜いて、正しくチューニングしておきましょう。
普段から、楽器全体の音程のバランスを確認をしておくことも、大切です。
★★★デクレッシェンドの練習★★★
下に、デクレッシェンドの練習用楽譜を示します。 音程が揺れないことと、音色が痩せないように気を使いながら、練習しましょう。
吐く息のスピードを一定に保ち、吹いている間は、「唇の形」が変わらないように気をつけましょう。 テンポは、4分音符=60を基本とします。ただし、息が続かないときは、テンポを速めてもかまいません。
【8小節目のフェルマータ】
8小節目のフェルマータの4分音符は、チューバソリですから、チューバのみが演奏します。 次の場面への橋渡し役ですから、世界観をよく考えて、大切に吹きましょう。
フェルマータが音符に付けられた場合は、長さを延長するという意味ですが、ここでは十分に音を響かせて、冒頭の世界観の余韻を作る役割と考えられます。
練習番号A
指定テンポは、allegro (アレグロ 速く、活発に)、energico (エネルジコ 勢いを付けて、 力強く)とあります。それまでの misterioso とは異なるので、イメージを切り替えて吹きましょう。
Fの音のロングトーンは、途中で音色が変わったり、音程が揺らがないようにしましょう。普段からの練習が大切です。吐く息のスピードを一定に保って、唇の形が途中で変化しないように心がけましょう。
14小節目のCの音は、フォルテをしっかり表現しましょう。
練習番号B
18小節目の4.5拍目の16分音符(Gの音)は、発音が曖昧になったり、テンポに乗り遅れないように注意して、明瞭に吹きましょう。
この16分音符を、指定テンポで明瞭に吹くのは、難しいかもしれません。 このサイトの 「チューバの基礎練習のやり方」から、「正確な発音とテンポ感覚を得るためのタンギング練習」を参考にしてください。
上達するまでには、時間がかかるかもしれませんが、根気強く練習しましょう。
24小節目の2分音符(Cの音)は、アクセントを充分に表現して、シンコペーションの要領で吹きましょう。この音は、本来の弱拍位置なので、チューバは、しっかりリズムを提示する必要があります。
【練習方法】
シンコペーションは、ワンダフルボヤージュ編に練習楽譜が掲載されていますので、そちらもご参照ください。
練習番号C
1拍目のリズムは、16分休符分の「音符と音符の間」を空けて吹きましょう。 また、このリズムが不正確だと、三連符のように聴こえることがあります。
最初の8分音符には、アクセントを付けて勢い良く吹きましょう。次の16分音符の発音が甘くならないように、気を付けます。
1拍目(強拍)と3拍目(中強拍)には、しっかりとアクセントを付けましょう。
さらに、2拍目と4拍目(弱拍)には、スタッカート記号が付いているので、音符と音符の間 を空けて吹きましょう。
練習番号F~J
音の長さを、同じリズムの他の楽器(※1)と揃えましょう。
この場面では、「チューバのリズムを引き継ぐ」グループ(※2)と組み合わさって、一つのリズムをつくります。セクション練習を通して、つながりのあるフレーズになるように心がけてください。
55小節目の4拍目(Gの音)は、弱拍からのフォルテ指定なので、単に強いだけではなく、音の輪郭も明瞭に吹きましょう。
同じように57小節目や59小節目も、弱拍から始まる音なので、輪郭がはっきりと聞き取れるように吹きましょう。
テンポ指定は、moderato (モデラート 中くらいの早さで)です。
B♭のロングトーンは、ダイナミクスがピアノなので、難しいと思いますが、音色が途中で変わらないように気を配りましょう。
クレッシェンドやデクレッシェンドの練習方法は、 吹奏楽のための「ワルツ」編に掲載しています。
そちらもご参照ください。
84小節目の2拍3連符は、チューバ単独でリズムを考えるのではなく、前の小節から引き継がれて、一体となっていることを意識しましょう。
83小節目から始まるグループ(※1)と、チューバグループ(※2)が、3小節間に渡って、2拍3連符が引き継がれるように吹きましょう。セクション練習で、タイミングと音のスピード感を統一しましょう。
練習番号J からはフォルテシモで音の跳躍が続くので、スピードのある息を入れて、響きのある音を心がけましょう。
また、スタッカート記号が付く音符は、音と音の間に隙間を作って吹きましょう。
跳躍の練習は、吹奏楽のための「ワルツ」編に練習楽譜が掲載されていますので、そちらもご参照ください。
106小節目からの山型アクセントを意識して、しっかりとアクセントを表現しましょう。
また、2拍目のF♯は、弱拍位置にあるので、特に発音が曖昧にならないようにしましょう。
4拍目のの16分音符は、三連符に聞こえないように、発音に気をつけましょう。
106小節目2拍目のF♯と、107小節目の3拍目のC♯は、演奏する機会が少ない音なので、音程が不安定なことが多いようです。普段からチューナーで確認し、抜き差し管の長さを適切に調整しておきましょう。
108小節目からのクレッシェンドは、フォルテシモに向かって、 しっかりと表現しましょう。
106小節目の4拍目のリズム練習は、 コンサート・マーチ「虹色の未来へ」編、に掲載しています。そちらもご参照ください。
練習番号F
(※1)コントラバス、バリトンサックス
(※2)バスクラリネット、テナーサックス、トロンボーンの3番、ユーフォニウム
練習番号G
【練習方法】
練習番号H
練習番号J
【練習方法】
【練習方法】
練習番号K~最終小節
練習番号K
113小節目からのクレッシェンド指定は、その幅や早さを考えて吹きましょう。
116小節目からは、フォルテ、メゾピアノ 、フォルテシモと、ダイナミクスが2小節間で急激に変化します。漫然と吹かずに、強弱の変化を正しく表現しましょう。
また、クレッシェンドに伴い、音程が上がる傾向があるので、気をつけましょう。
練習番号L
maestoso (マエストーソ) と記されているので、 威厳を持って 堂々と吹きましょう。
練習番号Lの、1小節目から2小節目にかけて、全ての音は、山型アクセントが付いたフォルテシモです。スピードのある息を入れて、はっきりと、ちから強く吹きましょう。
4.5拍目の16分音符は、特に発音が曖昧にならないようにしましょう。
「大きな音」ではなく、「遠くまで届く音」をイメージすると良いでしょう。
最終小節
Allegro (アレグロ 速く、活発に)の指定があります。
1拍目の16分音符は、山型アクセントをしっかり表現して、音の輪郭が明瞭に聞こえるように吹きましょう。 ただし、舌で息を遮った、「響きのない音」や乱暴な音にならないように、意識しましょう。
楽曲の最後を締めくくる大切な小節ですから、響きを大切に吹いて、締めくくりましょう。
おわりに
「古き森の戦記」の解説は、いかがでしたか?楽譜をしっかり見直すことが、できたでしょうか。
チューバを始めて、まだ日が浅い人も、また、そうでない人も、この機会に、楽譜をもう一度見直してみてください。
音符だけを追いかけるのではなく、バンド全体のサウンドを聴きながら、演奏出来るようになれば、いいですね。
さあ、明日から、また練習を頑張りましょう!
さいくろん
チューバ暦30年。社会人吹奏楽団と管弦楽団で活動中。 アマチュアのボランティア活動として、小中高校での練習もサポート中です。
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