クラリネット奏者の知っておきたい奏者やおすすめCD、楽曲(ソロ)の紹介
横山 由樹
クラリネット歴10年。大学にて音楽教育を専攻。 クラリネットを桜井真理、恩智聡子に師事。 カールライスターマスタークラス受講。中学、高校の吹奏楽部のトレーナーとして出張指導、運営相談等フリーランスに活動中。
部活や楽団でクラリネットを演奏しているけれど、いい音楽って何だろう?いい音ってどんな音だろう?と疑問に思うことはないでしょうか。
ソロを吹いてみようと思ったときに、とっつきづらいと感じる人も多いと思います。
様々な演奏を聴いてみると、奏者それぞれの価値観に触れることができ、自分の目指す音楽の指標を定める手助けをしてくれます。
ここではまず王道として知っておきたい奏者、聞いてみてほしい音源、ソロの曲を紹介していきます。
知っておきたい奏者
世界的に有名な奏者・日本を代表する奏者は沢山いらっしゃいますが、これから音源を探して曲に触れていく、という時に名前を聞くことが多いであろう奏者・CDのリリース数の多い奏者を中心に紹介していきます。
カール・ライスター
ドイツのベルリンフィルで長く主席を務め、CDのレコーディング数も多く、世界で最も有名なクラリネット奏者といっても過言ではありません。
類を見ない柔らかな音色、滑らかな音と音のつながり、自然で溶け込むような曲作りが魅力的な奏者です。 日本での普及活動にも精力的で、草津、軽井沢等の国際音楽祭やセミナー、マスタークラスの講師として度々来日しています。
クラリネットの主流はフレンチ式と言われるクラリネットですが、ライスターはドイツ式のクラリネットを愛用しており、音色にはドイツ菅を使っている影響も感じられます。 。
▼オススメCD
キング・オブ・クラリネット~カール・ライスターの軌跡
クラリネットの名曲を有名なフレーズを含んだ楽章区切りで収録しています。
26の有名どころが詰まっているので選曲にも使えるCDです。
ザビーネ・マイヤー
ドイツの女性クラリネット奏者です。
カラヤンたっての願いでベルリンフィルに招かれましたが、楽団員から拒否され僅か1年で退団するという経歴の持ち主です。
明朗なアーティキュレーション、パワフルな演奏が持ち味の奏者ですが、モーツァルトをバセットホルンで演奏した音源が、温かく深い響きが作曲当時の演奏を彷彿とさせる名演として有名。
ノンストレスなアーティキュレーション、難易度を感じさせないような軽やかな演奏をぜひ聞いてみてください。
▼オススメCD
モーツァルト:クラリネット協奏曲 他バセットホルンでモーツァルトのクラリネット協奏曲を演奏している貴重な音源です。
武満 徹のファンタズマ/カントスの解釈も面白いです。
横川 晴児
前NHK交響楽団首席奏者。
独特のアンブシュアで古典から現代曲までカバーする日本のクラリネット奏者です。 プーランク、フランセなど現代に近い作品のレコーディングが好評。
私達日本人には共感しやすい音楽で、現代曲の入門として聞いてみてもらいたいです。
▼オススメCD
フレンチ・サマー フランス音楽らしい軽やかさが聞いていて愉快なCDです。
武田 忠善
故ジャック・ランスロに師事し、現在は国立音楽大学の教授として教鞭をとりながら演奏活動も行っています。
音楽の組み立てがとても分かりやすく、ソロの曲を練習する際にはまず参考にしてもらいたい奏者です。 日本クラリネット協会の会長を務めた経歴もあり、日本のクラリネット界では外せない重鎮です。
▼オススメCD
武田忠善 クラリネット・リサイタル サンサーンス、ブラームス、シューマンを聞くならライスターと合わせて聞いてみてください。
松本 健司
現NHK交響楽団の首席奏者。 一番の特徴は音色の幅の広さです。
一つの曲の中で感情や情景をまるで会話をしているようにコロコロと変化させていきます。 音色の幅もさることながら、レパートリーも非常に多く、参考音源を探すときにはまず調べてみてもいいでしょう。
感情を込めて、表現豊かに、といった指示に行き詰まった時は是非聞いてほしい奏者です。
▼オススメCD
アラベスク~クラリネット小品集~ Original recordingジャンジャン、ガーシュインなどプログラムに変化を付けられる曲の詰まった1枚です。
クラリネットオススメの曲
ここではクラリネットと言ったらこの曲!という楽器を吹いたことがない人でも1度は聞いたことがあるであろう名曲から、クラリネットってこんなこともできるんだ!という楽器の面白さを感じられる曲を紹介します。
何から聞いたらいいかわからない、という人は参考にまずはこちらの作品から聞いてみてください。
モーツァルト:クラリネット協奏曲イ長調KV622
テレビのBGMから、本屋さんや美術館、音楽ホールのトイレなどどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
第2楽章(12:30~)の美しいメロディーが耳にやさしく心に響きます。
敬虔なキリスト教徒だったモーツァルトの曲の終わりには、しばしば「神に捧ぐ和音」と言われる長三度の和音が使われています。
演奏はA菅という吹奏楽ではあまり馴染みのない特殊管で演奏されていますが、B♭管用の楽譜も市販されています。
ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー
ドラマ「のだめカンタービレ」でエンディングとして使われ認知度も高いのではないでしょうか。 冒頭のグリッサンドをかっこよく決めてソロを吹いたら周りの人に喜ばれること間違いなしです。
クラシックにとっつきづらい人もジャズ調で楽しく聞くことのできる1曲です。
ウェーバー:コンチェルティーノ
初めてソロの曲を演奏する人にオススメの曲です。
ウェーバーらしい華やかさが楽しめつつも、吹奏感が比較的吹奏楽に近く、演奏難易度も高くはありません。
多くの奏者が演奏しているので聴き比べも面白いです。 学生のソロコンクールの課題曲に上がることも多い曲なので1度触れてみて損はないでしょう。
プーランク:クラリネットソナタ
クラリネットの表現の面白さが満喫できる1曲です。
激しさ、哀愁、道化、極限まで弱いピアニッシモからフォルティッシモまでクラリネットの性能を駆使して演奏します。
表情豊かな第1楽章、ドラマチックな第2楽章、技巧と表情が合わさり、劇的な終わりを迎える3楽章から構成され、楽章のみの演奏でもコンサート映えが期待できます。
フランセ:クラリネット協奏曲
クラリネットの名曲であり迷曲として有名な曲です。 クラリネットに抱いている固定観念を打ち砕いてくれるのではないでしょうか。
「聴き手はこの協奏曲を十分楽しんで聴くことが出来るでしょう。
宙返りがあったり、翼が向きを変えたり、まるで一種の曲芸飛行のようなものですから。ただ奏者は演奏中、常に恐怖と隣り合わせ。
演奏に際しては図太い神経と数時間もの゙飛行経験゙が求められます。」
作曲者のフランセが語った言葉がまさにこの曲の面白さです。 クラリネットのソロの曲としては最高難易度を誇ります。
もちろん演奏にチャレンジしていただきたいですが、聞いてみてクラリネットの可能性を感じていただけたらと思います。
おわりに
音楽の表現の仕方には個性があり、答えはありません。
聴く人ありきの音楽、自己満足で終わってしまってはいけませんが、没個性的であっては埋もれてしまいます。 ここをきっかけに自分の音楽を形作る音や、音楽の価値観を探していっていただけたらと思います。
ありがとうございました。
横山 由樹
クラリネット歴10年。大学にて音楽教育を専攻。 クラリネットを桜井真理、恩智聡子に師事。 カールライスターマスタークラス受講。中学、高校の吹奏楽部のトレーナーとして出張指導、運営相談等フリーランスに活動中。
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